人気のデイサービス、評価の高いデイサービスとはどんなデイサービスだろうか?
色々な要素があるが、信用されているデイサービスであることは最も重要な要素の一つだと言って良いだろう。
評価や人気は信用の上に築かれるものだからだ。信用できないが評価している、人気があるというのはありえない。
なぜコロナの話をする前に信用の話をしたかというと、危機対応のときこそ信用が鍵になってくるからだ。
この点を当社の実例で恐縮だが書いていきたい。
実は当社のデイサービスでこの2月にコロナ感染者が出た。もちろん、感染対策は徹底している。しかし、デイサービスの場合、通所が前提となっているため感染経路を完全に防ぐことはできない。ある公的機関の情報によるとデイサービスの3割程度が既に感染者を出しているという。分かっているものだけでもそうだから、検査、発覚していないだけでほとんどの事業所で感染者は出ていると考えたほうがいいだろう。実際に当社の感染者は自覚症状や症状がない人がほとんどだった。だから、感染者が実際にいてもその人が検査を受けなければそのまま気が付かない場合がほとんどだと言えるだろう。
さて、一人目の感染者が出たという報告があった際に当社ではすぐに保健所に報告を入れた。
保健所では濃厚接触には当たらないという見解を出し、様子を見てくれということだったのだが、その翌日2人目、3人目が出た。当社では事業所閉鎖をしたほうが良いと判断し、保健所に何度も働きかけ、濃厚接触に当たるという判断をもらって2日目に事業所閉鎖という判断に至った。
なぜ濃厚接触という保健所の判断にこだわったかというと、自己判断で閉鎖してしまうと、保健所に入ってもらい感染経路の調査やPCR検査による対象者の範囲を特定したり、安全な再開時期など全て自己判断になってしまうため、素人判断によるミスを恐れたからだ。
おかげで、保健所手動で調査、検査、待期期間などを指定してもらい、事業所閉鎖、安全な再開時期などの指示をもらうことができた。
もちろん、取引先などから様々な批判もいただいた。一人目が出た時点ですぐに閉鎖すべきではなかったかという批判が多かった。実際にデイサービスの中には一人目が出た時点ですぐに閉鎖し、3~5日ほど様子を見てまた再開するというケースも半分ほどあるようだ。しかし、当社は上記の理由でそうしなかった。実際、保健所は濃厚接触者と認定した人は陽性者、陰性者問わずきっちり2週間待機する指示だった。ということは、3日閉めて様子を見て陽性者が増えないから再開するという対応では、潜伏期間後に発症する場合のリスクに対応できないことになる。つまり、自主閉鎖は素人考えの判断とセットである点にリスクがあると今は思う。
もっとも、私は私の対応がベストだと思っているわけではない。というか、ベストな正解を常に選択する。そんなものは日本国政府でも無理だろう。様々な意見があるのだ。
そこで私は常に正解はないということを前提に以下の方針を今回立てた。
1、すぐに正確な情報を社外及び社内に公開し、ガラス張りにして、情報を隠蔽しない。
2,間違っていたらすぐに撤回し、謝罪する
3,自宅待機中の職員の給与は100%保証する
4,起こったことのすべての責任は社長ただ一人にある
という方針をすぐに出した。それらは全て職員が全員持っている経営方針手帳に記載されている内容だが改めてそれを再確認したのだ。
完全な正解などない。そうであれば、自分が間違うことを前提に正直にやるということを基本方針にしたわけだ。
例えば、一人目の感染者が出た場合、それを誰にどこまで公表するか迷ってしまう経営者は多いと思う。役所が指示してくれるわけではない。公表したら風評被害にならないか、利用控えが起こって売上が激減しないか、なぜすぐに閉鎖しないのかと批判されないか、など様々なリスクが頭をよぎるだろう。怖いと思う。私も当事者だったのでその気持ちはよくわかる。
しかし、そんなことをウダウダと考えたり、情報収集してから公表しよう、間違った情報を公表したらよくないのでまずは調査しよう、報告の仕方をどのようにするか考えよう等とやっているうちに感染拡大して、公表したとする。
すると、なぜ公表しなかったのか、情報を隠蔽したのか、公表が遅れた理由は何かと批判される。感染そのものとは関係ない企業の姿勢を批判されてしまう。
実際に炎上する記者会見や不祥事の共通点は結局のところ、情報開示が遅い、しかもごまかしがあるという場合がほとんどだ。
そこに、嘘がある。ずるいと思われる要素があるからこそ批判を浴びるのだ。
もちろん、意思決定をしたり、情報を公開したりしても批判する人はいる。
だから、公表してもしなくても、どうせ批判されるなら、公表をせずにばれない場合がほとんどなのなら、その誘惑に乗りたい気持ちも分かる。
しかし、仮にばれなくても、そのような企業のトップの姿勢は社員が見ている。感染者の家族や担当ケアマネジャーは見ている。そして、信用を失ってしまうのだ。
もちろん、事業所が閉鎖になれば売上は失う。しかし、信用は残る。だが、信用を失ってしまったら、お金で信用は買い戻せないのだ。
当社の理念及び基本方針に次のものがある
〇ミッション→「社員第一主義」
〇価値観→ 「潔くあろう」
〇危機対応方針→ 「隠さない。ごまかさない。間違えたらすぐに謝罪する。情報はすぐに公表」
それに沿って、今回のコロナにおける方針を社内に発信した。
このような基本理念や基本方針を事前に確立し、社内に周知(毎週の勉強会等)していたからこそ、混乱はあったものの、すぐに方針を示すことができたのだ。
危機のときにどのように対応するかというのは実は枝葉のことであり、場当たり的に対応すべきものではない。重要なのは理念に基づく基本方針を事前に用意して、職員と共有できているかである。
それがあれば、経営者も職員も自動運転車のように自動的に基本理念に沿って対応することができる。
それがないと、どうしてもどちらのほうがより得か、損しないためにはどうしたらよいか、メリットが高いほうがどうかなどの損得計算で場当たり的に判断してしまう。
もちろん、今回失敗もしたし、批判もいただいた。例えば職員からは情報公開のときの情報管理ルールを徹底できず、不安を与えてしまったり、取引先からはすぐに事業所閉鎖すべきだという人もいたし、毎日情報公開のFAXをした(本当にケアマネ全員に毎日FAXで情報を配信した)ことが情報公開の頻度が多すぎるし、ピンともずれているという批判もいただいた。
だが、それは仕方ないことでもある。すべての人にとって満足のいく対応は難しい。批判は謙虚に受け止めて次に活かすしかない。
コロナによる事業所閉鎖は怖い。大変だ。しんどいことも多い。職員にも不安がつのる。だが、良いこともある。
正直に真摯に対応していれば、ほとんどのお客さん、取引先が本当に温かい言葉をくれるのだ。泣いてしまう職員も多数いたようだ。
また、結果的に職員の結束が固まる。会社との信頼関係がより強固になる。理念でうたっていたことがただのお題目ではなく、実際に口だけではなく、実践することを職員全員が実感できるからだ。
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