理念では食えないか~当社の理念が働く女性支援になった理由~

理念では食えない。よく聞くセリフだ。

しかし、正確には「理念だけでは食えない」である。そして、逆に理念がないと食えないのは確実である。

というのも、当社が組織的にある程度安定し始めたきっかけは理念を作って実際に理念を実現しようと社員に少しずつ働きかけてきたころだからである。

今日はそんな話をしたい。

理念でよくあるのが「お客様第一主義」「お客様にとって最も快適なサービスを提供する」とか、そういう内容である。

だが、それではうまくいかないと断言できる。

なぜなら、社員が一丸となっていない状態で(だいたいの中小企業はそうであろうし、だからこそ理念を作ろうと思い立つはずだからである)このような理念を先に掲げてしまうと、社員が反発したり離職したりしてしまう。

なぜか。社員自身が会社に大事にされているという実感がなければ、お客様をいくら大事にしようと言っても逆効果だからである。

社員はこう思う。「はいはい。分かりました。また、自分たちが犠牲になってお客様を大事にすればいいんですね」と。

そうなのだ。社員は「お客様を第一に」と言われると、自分たちは二の次だと感じてしまうのだ。まして、会社はうまくいっていない。組織もぎくしゃくしている。待遇もよくなっていかない。そんなときに、「お客様第一」という言葉は自分たちがないがしろにされている気持になるのだ。

もちろん、経営者は会社を良くして社員に報いるために売り上げを上げたいと思っているのは分かる。だが、売上を上げて、その次に社員の順番ではうまくいかない。

私もそこが分かっていなかった。

理念には2つある。それは対顧客に対する理念と対社員に対する理念である。そして、対顧客に対する理念はどの会社も手厚く、何か条にもわたって理念を作っている。

だが、対社員に対してはせいぜい「従業員の物心両面の幸福の追求」と例えばそんな1行くらいで終わらせているのが一般的ではないだろうか。

そこで私はいったん対顧客の理念からは離れた。まずは徹底的に職員を大事にしようと思ったのだ。

そこで、顧客第一主義の看板を下ろした。そして、職員第一主義を掲げ、もし、顧客と職員のどちらかを優先しなければならない場面が来たら、顧客にお引き取りいただき、職員を守ると明言し、HPにアップしてしまったのだ。

そして、経営計画の最初に職員の平均年収目標、パートの時給目標をいついつまでにいくらにすると掲げ、残業0、有給所得率100%と、これ以上ないと思えるほどの従業委員第一主義の施策を盛り込み、公表した。

そして、実際に毎年その目標に近づけていった。例えば昇給なら毎年平均3%以上とか、賞与は年に3回支給するとか。

そんな話をすると、「儲かっていないのに昇給や賞与なんて無理に決まってるだろう」と言われる。

そうなのだ。儲けが増えないと職員に払うお金は増やせない。当然だと思う。だが、その順番でやっているからうまくいかなののではないだろうかと私は思った。

そこで、利益は増えていないのに、昇給と賞与を先に増やし始めてしまったのだ。もちろん、利益を削ってである。

つまり、社員第一主義を念仏ではなく、身を削って実行に移したのだ。

理念と実行が伴った瞬間だった。

だが、これで理念の実現に対する社長の意欲は本物だと社員が分かってくれた。勉強会への参加率も増えた。朝礼への参加率も増えた。良い人財が定着し、入社してくれるようになっていったのだ。

卵が先か鶏が先か問題だと言う。

どちらが先かは分からないが、一つ確実に言えることはどちらかが先に生まれればあとは自動的に卵も鶏も増えていくということだ。

そうであるなら、あなたが鶏なら鶏が先だし、あなが卵なら卵が先だ。

とにかく、始めてしまうことである。

どちらが先でもあなたが先に実行すれば社員はそれにこたえてくれるはずだ。

理念が働く女性になった理由については次回に続く