昨日、高齢者住宅新聞の取材を受けた。
コロナ禍で全国のデイサービスの稼働率が落ちているため、何か対策について一言欲しいというインタビューだった。インタビューの内容は2月か3月に記事になるのでそちらに譲りたいと思うが、改めてこのテーマについて自分なりに考えてみた。
まず、稼働率が落ちるとはどういうことか。
それは、需要が供給を下回ったこと意味する。具体的にはコロナで高齢者が自宅から出なくなり、デイサービスに通うという需要がなくなったことを意味する。
では全てのデイサービス利用者の需要がなくなったかというとそうではない。需要がなくなったのは、デイサービスに通っても通わなくても直ちに困らない、ある程度自立している利用者からの需要だけである。
逆に言えば、デイサービスを使わないと生活に支障が出る、通所が必須の利用者の需要は継続しているのである。
例えば、コロナで家族が自宅でテレワークになった。自宅で仕事をしている。しかし、親が家にいて目が離せない。目を離したすきに徘徊して行方不明になってしまう。あるいは、時間の大部分を解除に費やさないと生活が成り立たない。
このような状態であれば、たとえコロナであっても、いや、コロナであるからこそ自宅を職場とするために、デイサービスに通ってもらう必要がある。訪問サービスではいけないわけだ(訪問は1日中見てもらえるわけではないから)。
ある意味、テレワークによって新たな需要が生まれたともいえる。今までは在宅訪問介護で対応できていたが、家が職場になったことによってそうもいかなくったという需要が生まれているのである。
これが新たな生活様式による新たな需要である。生活様式が変われば、1つの需要がなくなる代わりに別の需要が生まれる。様式の変化は事業変化も生むのだ。それはビジネスチャンスになりうる。
さて、当社の事例である。
先日、ある管理者から報告があった。佐藤さん(仮名)という女性がコロナ禍で夫の収入が減った。これまではパートだけであったが、今後はフルタイムで共働きをして家計を助けたいという。
しかし、問題がある。同居している親の介護だ。しかも、かなり難易度が高く、近隣に受け入れ可能なデイサービスはなかった。受け入れをしてもらうためには次の条件を満たしている必要がある。業界の型なら分かると思うが、これはほぼデイサービスでは不可能である。
かといって、家族は特養には入れたくないと言う。住み慣れた練馬で親と一緒に暮らしたいという希望がある。
では、デイサービスでは困難な条件とはどんなものだろうか。それは次のような条件である。
1,同居している親は介護度5で、栄養は全てチューブを使った栄養補給である。そして、これはスキルの必要な医療行為であるため、スキルのある看護師がいる施設でなければ対応できない。
2、9時~19時で比較的遠距離の職場でフルタイムで働くため、8時~20時の間で預かってもらいたい。
3,ほぼ全介助が必要のため、送迎のときも家に入って着替えや移乗を行う必要がある。訪問介護は予算の関係で使えない。つまり、送迎ドライバーがそれをやる必要がある。場合によってはスタッフがもう1人つく必要がある。
業界の方なら分かると思うがこの案件はデイサービスではかなりの困難事例である。実際、だから受け入れ先は見つからなかった。
そこで当社に相談があったわけである。
当社は理念に「顧客の要望にノーと言わない」という理念があるので、ノーとは言わず受け入が決まった。もちろん、受け入れが可能だからでもある。
なぜ、受け入れが可能かというと、
1,介護度5で医療行為が必要な方にも対応可能な医療行為を実施可能な看護師を配置していること(現在看護師は全店で自社看護師5人配置し、看護ステーション4社と連携)
2,営業対応時間は7時30分~21時、宿泊も可
3,送迎ドライバーは全員全介助対応(費用も発生しない)
上記を普段からやっているから対応可能だった。
では、もちろんたまたまそれをやっていたからではない。フルタイムの働く女性を介護離職から守るためにどのようなサービスの形であればそれが実現できるかを一つ一つ形にしたからだ。
商品開発は理念を形にしたものだと思う。
働く女性を介護離職から守るという理念があるから、どのような商品がそれを可能にするかという発想で商品開発ができるからだ。
これをやっていくうちに、特養でも受け入れ困難な案件でも受けられるようになってしまった。
実際に先週あった話だが、当社の利用者の武田(仮名)さんが、やはり家族の負担が限界になり、特養に入所を希望された。当社でも武田さんにとってはもう特養のほうが良い状態になっていると思っていたので、良かったですねとご家族がに声をかけた。
その後、特養の方が当社のデイサービスに武田さんの状態の現場確認の来られた。だが、様子を見た後、「すいません。うちでは受け入れ困難です」と言われたのだ。実は特養は今人手不足で大変だ。困難事例ほど受け入れが難しいという事態になっている。
介護度が高い人は特養。軽い人はデイサービス。この図式が成り立たなくなっているのだ。デイサービスにも断られ、特養にも入れない。困っている人ほど誰も助けてくれないという不条理な事態になってしまっているのだ。