介護報酬が下がって経営が苦しい

 介護報酬が下がって苦しい。2015年以降、介護報酬の度にこの傾向が顕著になってきた。

この問題にどのように取り組むかがデイサービスの経営を分ける。

 これはまず経営環境から考えなければならない。つまり、どのような環境に自分たちは置かれているのかをまず考えて作戦を立てるということである。

逆に次のように考えたら最悪です。

 「介護報酬が年々下がる。客単価が下がっている。しかし、デイサービスは介護保険事業であるから介護報酬を上げる価格決定権はない。そこで食事代やおやつ代という自費の値段を上げて下がった報酬を補おう。」

 なぜ最悪かというと、事業を相手側から見るのではなく、自分たちの都合で見てしまっているからである。値上げ自体が問題というよりも顧客や市場などの経営環境ではなく、自分たちの視点や都合だけで見ている思考が問題だということです。

 では、具体的に経営環境を見てみよう。経営環境にもいろいろありますが、デイサービスは保険事業なので政府の方針がまず経営環境として押さえておかなければならない。

介護報酬は3年に一度改定される。そして、2015年以降は介護報酬は下がり続けているのだ(実際にはもっと前から)。

 実際にはプラス改訂の年もあったではないかという反論もあるかもしれないが、あれは官僚が批判をかわすために処遇改善加算などの事業者の懐に入らないお金も含めてプラス改訂という見せ方をして、よく分かっていない報道陣に記事を書かせているだけで、実質的に事業者の懐に入るという意味での報酬単価は一貫して下がり続けている。

 まずここを押さえなければならない。

 では、次に介護報酬は今後上がるのか。という点だが、これはないと考えておくべきである。言うまでもなく、少子化による労働人口の減少で納税の担い手が減り続けることを考えれば報酬は減ることはあっても増えることはないからだ。福祉予算の必要総額は今後増え続けていく以上、国は予算を抑えなければいけないからである。

 ではこの事業は絶望的だから撤退すべきかというかというと、それは半分イエスであり、半分はノーというふうに私は回答している。

 確かに実際に撤退事業者は年々増加している。これは厳しい経営環境を考えれば当然である。

 例えば2020年4月に独立行政法人福祉医療機構(WAM)の経営サポートセンターが2018年度の通所介護事業所(老人デイサービスセンター)の経営状況レポートを公表しています。少し長いですが抜粋してみよう。

「2018 年度の通所介護事業所のサービス活動収益対サービス活動増減差額比率は、地域密着型で 3.2%(前年度+1.0 ポイント)、通常規模型で 4.5%(前年度△1.9 ポイント)、大規模型(Ⅰ)で 7.8%(前年度△4.0 ポイント)、大規模型(Ⅱ)で 9.5%(前年度△3.1 ポイント)であった。定員規模が大きいほど高くなる傾向は前年度と同様であったが、報酬改定における規模ごとの基本報酬の見直しが大きく影響しており、改定前は事業規模別に 2.1%~12.6%とばらつきがあったものが、改定後は 3.2%~9.5%まで縮小していた。なお、地域密着型の赤字割合については 2017 年度とほぼ同水準の 44.3%と約半数を占めており、引き続き厳しい経営状況にあった。黒字施設と赤字施設では、どの事業規模においても、利用率に明確な差があるほか、利用者 1 人 1 日当たりサービス活動収益に差があった。」

 この文章は簡単に言うとデイサービスの利益率は地域密着型で利益率が3.2%しかなく、赤字の事業所が44.3%もあるということ。そして、これまで優等生だった通常規模のデイサービスも2~4%利益率が下がったということが書かれている。

 この状況を踏まえると、今後も撤退事業者は増えるはずである。

 そして、利益率が下がり続ける状況であれば、撤退すべきという判断もありえる。他に儲かる商売があるならそれもありだ。

 一方で、この事業からは撤退できない。あるいは撤退したくないという事情がある経営者もいる。当然である。借金があったり、この事業に対する志があったり、動機は色々あるだろう。

 さて、事業を継続すると決めた人には私はこのように言っている。「この事業はやり方によってこの事業は明るい未来がある事業だと考えていますよ。」と。

 なぜなら、物事には悪い面もあれば、良い面もあるから。この事業の良い面、それは「今後市場から撤退するプレイヤーは増える一方で、ターゲットである高齢者は2042年まで増え続ける」という点である。

 より平たい言葉で言えば「競合は減り続ける一方でお客さんは増える」という状況である。

 孫氏も言っている。

 兵法において、競争して勝つのは下策であり、戦わずして勝つことが上策だと。そして「プレイヤーが減り、客数が増える市場」は非常に魅力的な市場という面があるということだ。

 長くなったので今日はこの辺で。次回に続きます。

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