国の借金問題から考える介護保険事業の未来への展望

 国の借金、財源問題はこの20年くらいずっとこの国のホットな話題であり続けてきた。このままでは国家が破綻するという財務省を急先鋒とする国家財政破綻論者。一方で円建てで国債を発行して国内で国債が消化されている限り財政破綻はないという財政破綻否定論者。

 いずれにしても、国の財政に収入の9割を依存している私たち介護保険事業者にとって最も重要な関心の的であることは言うまでもない。

 正直、これは専門家でも意見が分かれるところである。だから私たちが国家が財政破綻するかどうかを考えても仕方ない。どっちに転んでもいいように準備しておくだけである。

 具体的には、国家破綻のほうに転んで、インフレ、金利の急上昇リスクに備えて、このコロナの金融緩和時期に固定金利(今ならしかも低利)で長期で借りておくのが良いだろう。また、政府系金融機関であれば今なら容易に連帯保証なし無担保での融資が受けられる方針なら連帯保証も外しておくというのもリスクヘッジとしては重要だと思う。

 ただ、長期的な視点で見たときに今現役の若い経営者、若者は悲観する必要はないと思っている。なぜなら、例えば今国家破綻して国債がデフォルト(債務不履行)し、政府が円を切り下げ、日本円が紙くず同然になったとする。

 しかし、若者にとってだからなんだと言うのだろう。日本人が所有する金融資産のうち7割以上をが55歳以上が保有しているのだ。逆に資産を持たない若者にとっては何の影響もないのだ。

 国が借金しまくって問題だという。その是非は私には正直分からない。ただ一つ言えることは、国が借金しまくって今国が若者や企業に補助金という形でお金をばらまいている。そしてそれが理由で今国家が破綻してもそのツケは今金融資産を持っている55歳以上の高齢世代の富裕層が負うことになる。これは一種の富裕層から若年世代への資産移転と言えないだろうか。

 翻って米国や英国の現状は逆である。どちらも医療保険の適用が受けられず病院で医療を受けられない若者が多数いる。特にイギリスでは日本と違い、バラマキをやめて健全財政をしていると言えば聞こえがいいが、緊縮財政で社会的弱者は病院にも行けず、失業率増加で仕事もなく悲惨である。

 私には欧米のほうがいいとはとても思えない。日本の失われた30年と違い、2国とも経済が発展しても格差が広がっているだけだからである。だってみんな病気になったら保険証使って病院にかかれるよね。英国だと並んで予約待ちしてそこから数日後の受診とか、正気とは思えない状況なのだ。

 話がそれてしまったので、本題に戻ると仮に日本がデフォルトしても、今資産を持っている人が損をするだけで、現役で仕事をしている私たちはインフレになった貨幣価値の円で収入をもらえるわけだから生活に困ることもない。年金生活者、生活保護者もインフレ反映後の円で年金をもらえるから問題ない。現在仕事をしている人も年金生活者も誰も困らないのだ。困るのは今資産を積み上げている人だけだ。(厳密には日本円建ての金融資産を積み上げている人=高齢者である。若い資産家はアメリカのETFや世界株や不動産等に資産を変えてリスクヘッジしているだろう)

 世の中には必要以上に不安をあおる人がいる。やれ少子化だ。高齢化社会だ。日本の借金は天文学的数字で国家破綻の危機だ。日本から逃げ出して海外を目指せ。国はお金がないので介護報酬を極限まで下げるから私たちは生き残りをかけて戦わなければならない。ets 

 気持ちはわかる。彼らも商売だからだ。しかし、私たちは考えなければならない。煽る人は煽って不安になる人が増えてくれたほうが得をする、そういう商売をやっている人だということを忘れてはいけない。

 武器商人はあの国が危険だ。我が国の敵だ。そう言って国民を煽らないと商売にならない。そういうことだ。

 主張や思想とは常にそういう誰かの利害に基づいている可能性がある。また、そう思って行動しないと誰かの都合に振り回される生き方になってしまう。

 もう一度本題に戻って、年々介護報酬が下がるからヤバイという。しかし、忘れてはいけないのは、高齢者が増える以上、そこにはマーケットがあり、そこにニーズがあるのだ。それがある限り、そこにかかるコストは誰かが負担するメリットがある限り負担するのだ。

 具体的には国の財政が仮に破綻したとする。今まではデイサービスで1日1万円の売上のうち、9千円を保険で国が負担してくれていた。それがある日から半分の5000円しか負担してくれなくなったとする。しかし、そうなれば残りの4000円(1割の1000円は今ももともと負担している)は消費者が必要であれば払うのである。例えば、消費者が介護離職して介護に専念したとする。月20万円の稼ぎがあったとする。それがなくなるのだ。逆に仕事を辞めずに1日4000円×20日の負担をしてもかかるコストは月8万円。差し引き12万円残る。だとすれば5000円払ってもデイサービスに預けたほうが手残りが多い。当然、生活がかかっている消費者はそういう判断になるはずだ。

 そうだとすれば、高齢者人口が増えるという市場の成長を考えると、バラ色の未来が待っているという言い方もできるではないか。(そこに戦略があればの話だが)

 私は必要以上に不安を煽る人も、悲観論をもとに聖域なき構造改革をというような人もあまり信用していない。その人の利害が見え隠れするし、そういう人はあまり建設的な未来図を示すこともしないからだ。

 少子化が問題だという話も、逆に言えば若者の失業率が低いという側面を見逃してはいけない。足りない労働力という話もだから平均給与が上がるのだという側面を見逃して行けない。だから機械化、IT化、効率化が進むという側面を見逃してはいけないのだ。

 そして、悲観的な状況の中でもメリットや強みの側面に光をあてて、成長戦略を作っていく。私はそれが可能だと思っている。

 そして、それこそが私たち企業家の醍醐味ではないだろうか。

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