稼働率を上げる方法はないか。経営者全員の悩みだと思う。
そして、稼働率を上げる方法は2つしかない。利用者の利用回数を増やすこと(新規獲得でも既存利用回数増でも)、そして利用者を辞めさせないことだ。
しかし、ここで多くの会社が間違いを犯す。
それは、「顧客が満足する(目的)」→ 「利用回数が増える(結果)」の順番を逆にしてしまうのである。
つまり、
「利用回数を増やす」ことを目的としてしまうのだ。特に経営が苦しいときほど、顧客の要望を無視して利用回数を増やしてしまう。その結果。。
「辞めたい利用者を辞めさせず、利用回数を無理やり増やす」→ 「顧客が不満を持つ」
このようになってしまう。
こうなってしまうと何が問題かというと、一時的に稼働率が上がったとしても長期的な稼働率を前以上に下げてしまうのだ。
理由はもちろん、信用を失うからです。
ケアマネから見たときに、そのお店を信頼して介護を任せている。それなのに売上のために会社の都合を優先して顧客の要望を無視してしまったら、利用者や家族からクレームを受けるのはケアマネである。
ケアマネは思う。一度サービスを開始したら辞めさせてくれないような事業所なんか怖くて使えないと。一回入所したら最後、出させてくれないんだったら最初から入れないほうがいいと。
そして、ここが重要だがそのクレームはケアマネ自身が窓口として受けるのである。最終的にはケアマネとしての自分の信用に関わる。
そして、ケアマネというのは半径2キロ以内のチャリ圏内の地域密着の商売だからその噂はあっという間に他のケアマネにも伝わる。ケアマネの情報網をなめてはいけない。
そして、一度信用を失ったら1年や2年では回復できない。一時の稼働率を優先させたばっかりに(しかもそれもどうせすぐに退所になる)信用を失ってケアマネからの新規客の紹介が完全にストップするのだ。息の根を止められたのと同じだ。
どうです。恐ろしいでしょう。
では、どうするか?
綺麗ごとでも月並みなことでもなく、純粋に顧客の要望を満たすのだ。自社の都合など一切考えずに、何なら利益度外視で、損失覚悟で顧客にとって最も良い支援をするのだ。
それは数字的な損失と考えてはいけない。信用を築き、自社のブランド価値を高めるためのプロモーション費用だと考えなければならない。
皆、顧客満足が大事だ。お客様第一主義だと口では言う。
しかし、本当の顧客満足とはそんな生易しいものではない。例えば、次のような状況だ。
コロナで赤字に転落し、回復の見込みも立たない状態になる。そんなタイミングで利用者の家族が「もう自宅介護は限界なので、お世話になったのだけれども親には地方の特養に入ってもらおうと思っている」という声を上げる。
ただでさえ赤字なのに退所者が出たらさらに稼働率が下がる。胃が痛い。さらに赤字が拡大するからだ。
それでも、1円の得にもならないのに、他社の特養まで見学のために送迎の車を出し、退所が決まったら卒業式で盛大に送り出すべきなのだ。
そのような究極な場面でも、迷わず顧客にとってためになる方を選ぶ。これが本当の顧客第一主義である。生半可なことではないのだ。
そのためには普段から会社の方針と価値基準を決めて、全員で共有しておく必要がある。
ちなみに私は昔、赤字の事業所の管理者に「このご利用者は毎日通所されている介護度5の方です。特養に入りたいと相談されています。でも退所されたら稼働率が激減します。どうしたらいいですか?」と聞かれたことがある。(この話の詳細はまた別のテーマで今度じっくり)
この従業員の問いに数字を根拠に答えることはできない。なぜなら。。
長くなったので次回に続く
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