デイサービスの稼働率を上げる方法。LTVをあえて意識しないほうがいい場面がある(2)

前回次のようなエピソードを紹介した。

私は昔、赤字の事業所の管理者に「このご利用者は毎日通所されている介護度5の方です。特養に入りたいと相談されています。でも退所されたら稼働率が激減します。どうしたらいいですか?」と聞かれたことがある。(この話の詳細はまた別のテーマで今度じっくり)

この従業員の問いに数字を根拠に答えることはできない。なぜならこれは数字問題ではなく、価値判断の問題だからだ。

だが、本当の顧客第一主義が長期的には信用につながり数字になるのは間違いない。そこまで見通して価値判断に沿った経営ができるかそこが問われるわけである。

きついのだ。苦しいのである。だがそれでも価値を方針を理念を優先させなければいけないのである。

経営の教科書にLTVという言葉がある。ライフタイムバリューの略で顧客の生涯価値と言われる。一時期の売上ではなく、その顧客が一生涯でどれくらいの売上をもたらしてくれるかについての指標である。

そして、LTVを上げるためには解約率を下げることが重要である。長く商品を使ってもらうことが重要だからである。

この指標はとても重要である。例えばアマゾンという会社はアマゾンプライムという入口商品を武器にこの指標を最大限活用して伸びている会社である。

だが、この指標。使い方によっては会社をつぶすくらい危険な代物である。なぜなら、LTVを上げることが目的になり、解約させないという悪手をとってしまうケースがあるからだ。

そんなばかなと思ってなめちゃいけない。切羽詰まれば、目的と手段を逆転してしまう思考に陥るのが人間なのだ。

だが、LTVは顧客満足度を上げることによって伸ばすべきであり、それを目的にしてはいけないことは前述した通りだ。

では、デイサービスの顧客のLTVはどう考えればいいだろうか?

確かに、特養に入った利用者は戻ってこない。つまり、どんなに満足度を上げてもその顧客のLTVは上がらないのだ。顧客満足度を上げてもLTVが上がらないのであれば、解約を無理に止めて一時的な稼働率を上げたい気持ちは分かる。

しかし、それをやると前述した通り、LTVは上がっても信用を失うのだ。(もっと言えば、そもそも顧客の定義を利用者に限定している時点でもう間違っているのだが、それはまた今度)

だから、このような場面ではいったんLTVは無視したほうがいい。それよりも信用に重きを置くのだ。

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