求人募集しても人が来ない!

「求人募集しても人が来ない!」この悩みはデイサービスに限らず、どの介護事業所でも共通の悩みではないだろうか。

以前、介護事業所の悩みと言えば契約の獲得であった。ケアマネからいかに紹介をもらい稼働率を上げるか。経営の悩みで言えば第1位が営業による稼働率アップであったと思う。

しかし、今や経営課題の第1位は人材採用になった。という感覚がある。私が事業経営している肌感覚だ。

つまり、「お客はとれる。でも、サービスを提供する介護スタッフが採用できない。」という流れになっているのがここ数年の感覚なのだ。

そして、この流れは加速する。なぜならそれが理論的帰結だからだ。

具体的には、2042年までは高齢者人口は増え続け、一方で生産労働人口は減り続けるため採用は難しくなるからだ。需要は増えるのに、サービスの供給が追い付かない。

普通の業界とは全く真逆のことが起こっている。これが介護業界の現実である。

この話をすると、他の業界の人は驚き、うらやましがる。それはそうだ。供給過剰であり、需要が減少がこの国の課題だからだ。

さて、需要が増えることが分かっているなら、売上は上がるのだから、給与を上げて待遇を上げて他の業界から人を引っ張ってくればいいと思うだろうか。

しかし、そうはいかない。この事業は税金と介護保険で成り立っている。そして、国も地方も財政は火の車だ。給与をいくらでもあげられるほど予算がないのだ。

介護スタッフの待遇改善は毎年のように議論のテーブルに上がる。介護は国の課題で、大変な仕事だ。だから介護職員の待遇改善は急務だ。だから、介護報酬を上げる必要がある。総論では皆賛成する。しかし、では予算をいくら配分するという話になると。。。

結局のところ、ない袖は振れないのである。国の予算で介護報酬をどうにかしてくれるということは期待しないほうがいいし、長期的には介護報酬より削減の方向に向かうと考えておいたほうがいい。

介護報酬アップは期待できない。だから高い給与は提示できない。結果、求人募集しても人が来ない。と、ここに戻ってしまう。結局、重労働である介護に安い給与では見合わないと思い、皆他の業界に人材は取られてしまう。これが今起こっている現実である。

さて、前置きが長くなったが、では、どうするかというのが今回のテーマである。

当社の実例を挙げながら人材採用を探っていきたい。

まず、大前提として、平均給与をまず上げ、そして毎年少しずつでも上げ続けていくことが重要である。社員もパートさんの時給もいずれもだ。

もちろん、GAFAのような企業のように高報酬は払えない。だが、業界相場の10%程度は高い金額にすることが重要だ。そして、他の業界の水準に近づけていく。その方針を示して実行していくことがさらに重要だ。

「介護報酬が下がっていく中で何を言っているのだ!冒頭の話と矛盾するではないか。」そう思われるだろうか?

確かに、介護報酬=客単価は上がらない。しかし、売上を上げることはできる。それは客数を増やすことである。実際、需要は増えているわけだから、理論的には介護人員さえ確保できれば、客数は伸ばせるはずである。

つまり、シンプルに言えば、客単価の減少以上に客数で補うということである。

もちろん、反論はあるだろう。

「利用者数が増えているのに、スタッフの数がそのままであれば、多少給料が上がったくらいでは割に合わない。そんなことをすればスタッフがつぶれて辞めてしまう。ただでさえ、ブラックな業界なのにさらにスタッフが疲弊してしまう。」

これが一般的な反論だろう。特に現役の管理者ほど上記のことは実感としてあると思う。

実際、当社も10年前は恥ずかしながら、毎年給与を上げることも、賞与を支給することもできなかったし、残業も多く、労働環境も良いとはとても言えない状態だった。

しかし、今は毎年給与を上げ、年2回以上賞与も支給し(コロナの今年は一回だったが)、残業はほぼ0時間、有給消化率も上がり、パートから社員になる人が毎年いるのだ。

介護報酬はこの5年で10%以上下がっているというのにだ。

だから、介護報酬が下がる=客単価が下がったからといって必ずしも給与を上げたり、労働環境を良くしたりできないわけではないということだ。

では、どのようにしてそれを実現するかである。

全国に4万件あるデイサービスの中で一番多い定員数は何人かご存じだろうか。それは10名定員である。最も大きい理由は看護師配置がいらないという理由だと思われる。

しかし、10名定員にしていると配置できる人員数は4人である。これ以上減らすことは容易ではない。しかし、4人ではどうしても拘束時間が長くなったり、休みが取れなかったりする。全体のスタッフに占める一人の比重が大きすぎるからである。一人休んだりするととたんにシフトが回らくなってしまう。4人のうち1人が休むということは25%の人員リソースが失われてしまうということになるからである。

では、スタッフが10名いたとしたらどうだろうか?この場合1名が休んでも10%程度の影響しかない。これが労働環境を良くするポイントである。定員数を増やすことで売上を増やし、スタッフ数も増やす。スタッフ数が増えることで有給を消化したり、誰か一人に業務の負荷がかかりすぎるのを防ぐのである。

だが、定員数を増やし、その分スタッフ数を増やしたら利益率が向上しないではないかという疑問があるかもしれない。

しかし、そんなことはない。たとえ赤字の事業所でも売上が倍になり、スタッフ数が倍になったとしてもちゃんと黒字になるのだ。

なぜか?それは売上が倍になっても増えるのは変動費である人件費だけで、家賃などの固定費は増えないからである。だから、増えた売上から人件費を差し引いた利益は全て営業利益になるのである。

さらに、もっと重要なことがある。売上が倍になったとしても、人員を倍にしなくてもオペレーションは回るということである。

実際に当社の実績でもそうである。例えば、利用者数が2倍になり、スタッフ数は1.5倍以下でも、残業時間が0になり、スタッフの有給消化も順調にできてしまう。これが現実なのだ。

当然、増えた利益を給与アップや賞与に回せる。給与や賞与が増えて、労働環境が良くなれば、採用条件が良くなる。また、お店の雰囲気が良くなっていくので、採用活動がうまくいく。人も辞めなくなる。

良い人が採用でき、その人が定着すれば、さらに良いサービスが提供できるのでまた売上が上がる。

この循環に持っていくことが大切である。

業界水準より高い金額で求人募集できる。堂々と良い労働環境をアピールできる。結果、求人募集をすれば応募者が増える。

実際に当社では直近で3名の募集に対して、250人の応募という過去最高記録を出した。

逆に、どんな求人媒体を使っても、原稿でいくらアピールしても、待遇や労働環境に魅力がなければ人はこないのである。

だが、ビジョンを見せれば人は来る。ビジョンが大事である。それについては次の機会に。

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