マーケティングの目的は

マーケティングの究極の目的はセールスを不要にすることである(ドラッカー)。

セールス重視を戒め、集客の重要性を説いた言葉である。

最近、良いものを作っていれば売れる時代は終わったと言われる。集客が大事だと。マーケティングだと。

しかし、本当にそうだろうか。

私の実感としては、良い商品を作ることがやはり一番大事だと思っている。逆に言えば、ものが売れなくなったのは、良いものを作っていないからなのだ。

これはつまり、良いものの定義に関わる。

良いもの=自分たち企業側が考える良いもの。この考えで作っていれば、ものは売れなくなる。(日本の誇るガラケーがiPhoneにとってかわられたのが典型。ガラケーは企業が考える良い機能で埋め尽くされ、高機能化し、ガラパゴス携帯と揶揄され、ガラケーという不名誉な通り名の由来となってしまった)

それではいけない。良いもの=顧客にとって必要な良いものと考える必要がある。ただし、顧客は何が必要かはダイレクトには教えてくれない。iPhoneなど見たこともないわけだから。

そういう意味では、商品開発の目的はマーケティング(による集客)を不要にすることとさえ言える。

マーケティングの機能は、大きく①市場調査と②集客がある。良い商品を作るということはこの②を不要にできる。

逆に言えば、良い商品を作れなければ、いかに集客を頑張っても結果にはつながらないということになる。

さて、前置きが長くなったが、これを介護のデイサービス運営に当てはめてみよう。

セールスはケアマネ営業である。しかし、顧客が望んでいない、自分たちが考える「良い介護」をケアマネに売り込んでいないだろうか。

それではケアマネを何度訪問しても結果は同じである。ケアマネは実によく知っている。どのデイがどの顧客にとって必要なことをどれくらいやっているのか、よく知ってくれているのである。

では、デイサービスのマーケティング(の集客部分)は何か。これは、例えば、ニュースレターや各情報媒体の郵送やFAXなどがこれに当たるだろう。当社ではどの媒体をどのようなツールでどの頻度で行うのかをルール化している。

なぜなら、店舗の管理者任せにしておくとバラツキが出るからだ。仕組みにして頻度や内容をコントロールしなければ、顧客との関係性は積み上げられない。集客という仕事は長丁場なのだ。

だから、当社ではマーケティングの集客という仕事は本社の独立した部門の仕事とし、店舗の仕事とは切り離している。

だが、である。上述した通り、いくら集客を頑張っても、もの=サービスが良くなければ売れないのである。

そこで、商品開発になる。そのためにはマーケティングにおける市場調査が必要となる。商品開発は一度やれば終わりではない。日々、市場調査をしながら毎月変えていくのだ。

なぜなら、ずれるからだ。年月が経過するごとに、時代は変化し、自分たちのサービスが市場のニーズとずれてしまうのだ。

そして、良いサービスが作れてしまえば、極論を言えば勝手に売れていく。ケアマネさんから電話がかかってくる。

それはそうだろう。顧客にとって必要な(しかも切実な)サービスを提供しており、そのようなサービスが地域にないとしたら、向こうから探して問い合わせてくるしかない。

当社が目指している究極の状態はこれである。ここを目指して日々やっていると言っても過言ではない。

私は最近これを実感した事例がある。新しく作ったデイサービスでドアにオートロックをつけようと思い、いつもお願いしている鍵屋さんに電話したころ廃業されたのか連絡が取れなくなってしまった。

困って、鍵屋さんを探した。

ただし、これまで利用していたオートロックは私が考えるセキュリティ及び利便性を一部しか満たしていなかったので、私は実は以前からずっとその点に不満を感じていた。

そこで、私は自分が考える理想のオートロックキーを探した。しかし、なかなか見つからない。そして、何日も探すうちに1社だけメーカーを見つけたのだ。

私は叫んだ。「そうそう。これが欲しかったんだ」そして、もちろん、問い合わせをしたのだった。

お分かりだろう。本当に良いものは顧客が探し出してまで買ってくれるのだ。値段が高い、安いの話ではないのだ。